大鳴沢温泉 (Ootanisawa Spa 


施設名 大鳴沢温泉
場 所 青森県鰺ヶ沢町建石
源泉名 建石(葛西1号)温泉
泉 質 単純温泉
温 度 30.5℃ pH 7.6 溶存成分総計 485mg/kg
お湯の様子 茶褐色透明,弱土臭,かけ流し,かなり温め
料 金 250円 営業時間 昼〜20:00

惜しまれつつもH16年9月いっぱいで休業。


 国道101号から鰺ヶ沢高原ゴルフ場を目指す。猪ラーメンで有名なレストランを越えるとすぐにいたんだ旅館らしき平屋の建物が見えるのがそれ。看板も道案内も何もない。湯小屋らしき建物も奥になるのでうっかり見逃してしまいそうな佇まい。

 ある筋では有名な大鳴沢温泉。実際にいってみてびっくりした。鄙び系の温泉施設では県内で5本指に入りそうだ。入浴料金も250円。(岩手山温泉白百合荘もそういえば250円だ)。
 さて,浴室は旅館の奥にあり,男女別の内湯に浴槽が2つある。片方が温めでもう1方がかなり温め。奥の壁側からぼこぼこと源泉とジャグジー形式の気泡があふれる。その上の浴槽縁には・・・。
 傷んだ浴室であるが,しっかり掃除は欠かさないようで,浴槽の中(確かにかべは傷んでいるが)をくまなくチェックしたがお湯は本当にきれいだった(写真3:温泉水中写真)。それを主張するかのように浴槽のすぐ脇に目新しいデッキブラシが自己主張していた。

H16/8/17


  
 (写真2)浴槽が並ぶ様子。どちらも温い。 (写真3)穴からは熱めのお湯が間欠的に噴き出す。


 平成16年9月30日,再訪しました。というより,これでラスト。営業している大鳴沢はこれでラストと思われる日にラッキーにも行くことができました。夕方6時ころ到着し,受付で「今日でラストって聞いてきたんですが,本当ですか」と聞くと,ご主人が重そうな表情で「はい,そうです。」と答えました。料金を出すと, 「いいよ,今日は。」とご主人が入浴料を返してくれた。

  
出っぱなしのカラン。この光景とも・・・      ラストナイトダンスをする***達。    つぎはぎだらけだった脱衣所のガラス。

 ご主人に休業の理由を聞いてみた。大きな理由は2つ。
①旅館として申請して登録している以上,現在の形態で営業許可がおりないということ。よって,公衆浴場として営業するなら,新たに申請が必要で,その申請のためには浴室の改修が必要。
②実際に営業を続けていくのが苦しい状態。改修の費用も微妙。
よって,本当は役所の指導で8月一杯までの営業許可だったが,無理にのばしてもらって9月まで延長してもらったとのこと。そこでとりあえず休業という形態をとり,冬を越えるまでに考えるということだった。

 ご主人の重い表情から察しはついたのだが,「春先営業する可能性はどのくらいですか」と聞くと,「正直50/50だなぁ」という回答だった。

 浴室は地元客でにぎわっていた。建石地区と森田村のご老人が3人入浴していて一緒にいろいろなお話ができた。30年ぐらい前,近くに温泉が無くて,ここがいつも大にぎわいだった話。神経痛が治って元気になったという話。「**シ」ではなく,壁の穴から蛇(アオダイショウ)が出てきてびっくりした話。そして屋根の上に登っていた「☆☆」が屋根を踏み抜いて浴室に落下してきた話。と,思い出話をいっぱい聞かせてもらった。そのまま約40分ぐらいおじいさん達と話し込んでしまった。そのくらいゆっくり入れるお湯だった。相変わらずカランのお湯は出っぱなし。「**シ」もいつになくいっぱいいて,元気に歩き回っている。
 おじいさん達はここのお湯を何とか残したいなぁ。という話を盛んにしていた。でも意見はやはり一緒。経営者の立場になると無理だよなぁ。まず清潔にしなきゃ・・・。おじいさん達はこれから(明日から)どこの風呂へいこうかと話していた。ここしか入る気がしないと言っていた方もいた。それだけ地元建石の人たちに根ざした湯だったんですね。一人帰り,また一人帰り,浴室から活気が消えていく。女性風呂はまだがやがやにぎわっている。最後に残った森田のご老人にあいさつをし,浴室を出た。

 無くなるとわかってから改めて見渡すと,実にたくさんの絵が飾ってあった。大鳴沢ギャラリーとでも呼ぼうか。棟方志功の版画や,岩木山を描いた油絵, 1000ピース以上あろうかというジグソーパズル,絵柄つき絨毯。そして,浴室の間に龍神様。どれも朽ちていていい味を出していた。きしむ廊下の天井を見ると,昨晩の雨で雨漏りした部分に セロテープでビニール袋をはりつけ,簡易的に雨漏りを止めていた。やはりもう終わりなんだなぁと改めて実感させられたシーンだった。玄関を出ようとしたら女将さんが出ていらして,丁寧にあいさつしてくださった。こちらもあいさつをし,最後の質問をした。

K「ここにまだみなさんは住むのですか?」
O 「はい,その予定です。」
K 「ってことは,お風呂はずっと出っぱなし?」
O 「入るとき以外は止めますが,はい一応・・」
K 「ってことは,もしごめんくださーい!ってノックして来れば,入れてくださいますか?」
O 「家族風呂になってますけどね。それでよければ(笑)」

K「なーんだ,じゃぁまた来年キマース。
 八戸から来たときはぜひ入れてくださいね。」
O「はい,いいですよ(ニッコリ微笑み!)」

ということでした。お湯が停止するのではなく,旅館が休業するだけだそうです。あの***達も元気に過ごして行けそうです。また来年,普通のお宅になった大鳴沢を再訪してみたいですね。

平成16年9月30日 大鳴沢グランドフィナーレ